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公益充実資金の解説と取扱規程

令和6年の公益認定法改正で新設された公益充実資金制度について、その概要・要件・実務上のポイントを詳しく解説します

公益充実資金は、令和6年の公益法人制度改革により新設された重要な制度です。従来の特定費用準備資金及び資産取得資金を統合し、法人がより柔軟に資金管理を行えるよう設計されています。
本記事では、公益充実資金の概要から具体的な要件、実務上の留意点まで、体系的に解説します。

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公益充実資金の解説と取扱規程

目次

  • 1. 公益充実資金の概要と特徴
    • 公益充実資金の主な特徴
    • 資源配分の柔軟性
    • 財務規律との関係
  • 2. 公益充実資金の要件
    • 公益充実資金の目的(認定規則第23条第1項第1号)
    • 必要な情報開示(認定規則第23条第1項第2号及び第46条)
      • 開示が求められる事項
    • 目的外取崩しに関する手続の整備
    • 実務上のポイント
    • 積立限度額の遵守(認定規則第23条第1項第4号)
    • 財産の区分管理(認定規則第23条第1項第5号)
  • 3. 公益充実資金の取崩し
    • 取崩しが認められる場合
    • 取崩しが義務付けられる場合
  • 4. 公益認定申請時の取扱い
  • 5. まとめ
  • 公益充実資金の規程例(ひな型)を配布中

1. 公益充実資金の概要と特徴

公益充実資金は、従来の公益目的事業に係る特定費用準備資金および資産取得資金を統合し、法人の実情や環境変化に応じて柔軟に資金管理ができるように設けられた制度です。収益事業等や法人運営会計については、従前どおり別枠で特定費用準備資金・資産取得資金を設定できます。

公益充実資金の概要と特徴

公益充実資金の主な特徴

公益充実資金の最大の特徴は、細かな事業単位ではなく大括りでの設定が可能な点にあります。
事業単位を横断した使途設定も認められており、透明性の確保を前提として、事業環境の変化に応じた柔軟な資源配分を行うことができます。

資源配分の柔軟性

例えば、公益目的事業1から公益目的事業2への目的変更や、事業実施から資産取得への変更など、従来は難しかった機動的な対応が可能となりました。

財務規律との関係

公益充実資金の積立ては、中期的収支均衡だけでなく、公益目的事業比率や使途不特定財産規制といった他の財務規律の費用算定にも加味されます。
さらに、公益充実資金は使途不特定財産規制において控除対象財産として扱われるという重要な効果を持っています。

このような財務規律上の効果を持つことから、公益充実資金として認められるためには、一定の使途の具体性(目的・時期・必要額など)が求められ、その要件を満たす方法で積立てを行う必要があります。

2. 公益充実資金の要件

公益充実資金として認められるためには、認定規則第23条第1項に定められた以下の要件を満たす必要があります。

公益充実資金の要件

公益充実資金の目的(認定規則第23条第1項第1号)

公益充実資金は、将来の特定の活動の実施、または将来の特定の公益目的保有財産に係る資産の取得や改良(以下「公益充実活動等」という。)に必要な資金として積み立てられるものでなければなりません。

認められる積立ての例

  • 既存事業の〇年度拡充(例:事業Aの対象地域拡大)に伴う支出見込みに備える積立て
  • △年度に見込まれる収益減(例:助成金終了)に対応するための補填計画に紐づく積立て
  • 特定の公益目的保有財産の取得・改良のための積立て

要件を満たさない場合

既存事業維持だけを掲げた漠然とした備えや、単なる繰越金・予備費としての積立ては認められません。将来実施が合理的に見込まれる具体的な活動、または具体的な財産取得・改良など、使途が明確である必要があります。

特定の活動の実施に際しては、定款の変更や変更認定(認定法第11条)を要する場合も想定されますが、公益法人が機動的に事業を展開できるよう、行政庁による変更認定を受ける前であっても、既に行政庁に申請を行っている場合や、理事会で決定した計画等により事業内容が確認できる場合など、具体的に活動の実施が見込まれるときには、公益充実資金の目的として当該公益充実活動等を設定することが可能とされています。

必要な情報開示(認定規則第23条第1項第2号及び第46条)

法人は資金の使途等について説明責任を果たす必要があります。そのため、事業年度終了後には所定の事項を記載した書類を作成し、備え置くとともに行政庁に提出しなければなりません。なお、当該情報が令和6年会計基準に従い財務諸表の附属明細書に表示されている場合は当該財務諸表で足ります(認定規則第46条第1項第7号及び同条第3項)。

また、法人はインターネット等の適切な方法により速やかに当該情報を公表する必要があります(認定規則第23条第1項第2号)。


開示が求められる事項

  1. 公益充実活動等の内容及び実施時期(認定規則第23条第1項第2号イ)

    事業年度末日における公益充実活動等ごとの内容および実施時期を開示します。
    公益充実資金の目的とする公益充実活動等は複数設定することも可能であるため、それぞれの活動について明らかにする必要があります。
    実施時期が10年先など遠い将来の場合には、不確実性が高まるため、その事情を説明することが必要です。

  2. 積立限度額及び算定根拠、公益充実資金の額(認定規則第23条第1項第2号ロ及びニ)

    必要以上の資金が積み立てられることがないよう、公益充実活動等ごとに必要となる金額(所要額)を算定し、各公益充実活動等の所要額の合計額を積立限度額として、それらの額をその算定根拠とともに明らかにする必要があります。
    所要額の見積もりは、過去の実績や類似の事例等を踏まえ、その時点における合理的なものとなっていれば足ります。
    実施時期が近づくことに伴う見積もりの精緻化により、必要な所要額の見直しを行います

  3. 当該事業年度の取崩額及び積立額(認定規則第23条第1項第2号ハ)

    財務規律においては、公益充実資金の積立ては費用とみなし、取崩しについては収入(又は費用の控除)として加味されることから、当該事業年度における取崩額及び積立額を明らかにする必要があります。
    積み立ての段階では各公益充実活動等への紐付けは不要ですが、取崩しの段階では各活動に充てた取崩額を明らかにします。

  4. 前事業年度末日における情報(認定規則第23条第1項第2号ホ)

    中期的収支均衡の算定において公益充実資金の積み立て・取崩しを反映するため、当該事業年度の情報に加え、前事業年度の末日における公益充実活動等ごとの内容及び実施時期、積立限度額及びその算定根拠並びに公益充実資金の額を明らかにする必要があります。

開示が求められる事項

目的外取崩しに関する手続の整備

公益充実資金は、その積立総額を管理するものであるため、公益充実活動等の実施時期や優先順位の変更によって、当初想定していた公益充実活動等から別の公益充実活動等へ資金を流用することは、「公益充実活動等以外の支出に充てるための取崩し」には当たりません。

一方で、法人として予期しない事態に対応するために資金が必要になる場合や、社会経済の変化に応じて機動的に公益目的事業を実施するための資金が必要となる場合などには、公益充実資金を当初の公益充実活動等以外の支出に充てるために取崩すことも、資金の有効活用の観点から妨げられるものではありません。

ただし、公益充実資金は法人の意思に基づいて一度使途が決定され、財務規律上の効果を持つため、目的外で取崩す場合には法人としての手続きを定めることが求められます。

実務上のポイント

例えば、定款に「公益充実資金の管理は理事会で定める手続による」と規定し、目的外取崩しを理事会決議に委ねる方法が考えられます。
具体的な取扱規程のサンプルは、本ページ下部よりダウンロードいただけます。

積立限度額の遵守(認定規則第23条第1項第4号)

事業年度末日における公益充実資金の額が積立限度額を超えていないことが求められます。

財産の区分管理(認定規則第23条第1項第5号)

公益充実資金は、貸借対照表の注記や財産目録、または附属明細書に表示され、他の財産と区分されていなければなりません。

3. 公益充実資金の取崩し

公益充実資金の取崩しについては、認定規則第23条第2項に規定されています。

取崩しが認められる場合

公益充実資金は、その目的とする支出が実際に行われた場合に、その支出額を取り崩すことができます。

取崩しが義務付けられる場合

正当な理由がないのに当該公益充実活動等を行わなかった場合には、その活動の所要額を積立限度額から控除し、控除後の額が公益充実資金の額を上回る場合には、その超過部分を取り崩さなければなりません。

留意点

事業環境の変化等に対応して使途を変更することは認められますが、合理的な理由なく繰り返し事業の実施時期を延期するような場合には、公益充実資金の目的とする公益充実活動等を行わないと判断される可能性があります。

4. 公益認定申請時の取扱い

公益認定申請時には、認定法第7条第2項第2号により提出する収支予算書の対象事業年度に係る見込額及び認定規則第7条第3項第3号の書類(認定法第5条各号に掲げる基準に適合することを説明した書類)を基に、中期的収支均衡が図られることが見込まれるものかを審査されます(認定法第5条第6号)。

ただし、中期的収支均衡の規律は、事前に将来の収支に関する計画を求め規制するものではなく、結果として、残存剰余額が解消されずに残っている場合に均衡が図られていないものと判定するものです。
そのため、公益認定の審査段階では、将来の各事業年度に関する具体的な収支の見込みまで求める必要はないとされています(新ガイドライン第5章第1節第1)。

5. まとめ

公益充実資金は、公益法人の資金管理に柔軟性をもたらす重要な制度です。
従来の特定費用準備資金や資産取得資金と比較して、事業横断的な設定や使途変更が可能となり、社会経済環境の変化に機動的に対応できるようになりました。

一方で、財務規律上の効果を持つことから、適切な要件を満たし、情報開示を行い、必要な手続きを整備することが求められます。
特に、目的外取崩しに関する手続きについては、定款や取扱規程において明確に定めておくことが実務上重要となります。

公益法人の理事・監事・事務局担当者の皆様におかれましては、本制度の趣旨と要件を十分にご理解いただき、法人の公益活動の充実に向けて有効にご活用いただければ幸いです。

公益充実資金の資源配分の柔軟性

著者:桑波田直人

【プロフィール】全国非営利法人協会専務取締役。(一財)全国公益支援財団専務理事。 『公益・一般法人』創刊編集長等を経て現職。財団ではAI開発や支援を担当。公益社団法人非営利法人研究学会では常任理事・事務局長として公益認定取得に従事。編著に『非営利用語辞典』、他担当編集書籍多数。

桑波田直人
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